あの雄姿、ふたたび!
昭和30年代東映黄金期の看板スターは、まぎれもなく中村錦之助(昭和47年萬屋錦之介に改名)であった。
『笛吹童子』で"錦・千代ブーム”を巻き起こして以来、錦之助は東映にあって一作ごとに目を瞠る進歩を遂げ、わずか3年で人気・実力兼ね備えた時代劇の若手ナンバーワンに昇りつめる。錦之助の躍進は、同時に東映が時代劇王国を築いて発展していくプロセスでもあった。
中村錦之助は昭和41年(1966年)東映京都を去るが、この12年間に出演した映画の数々は東映黄金期の記念碑であり、また珠玉の名作揃いである。あの若き日の錦之助をスクリーンに甦らせたい。その活躍ぶりを目の当たりにすれば、錦之助は今でも”生きている”ことに気づくであろう。一等星の燦然たる輝きは恒久的である。
「錦之助映画祭り」は、昨年(2009年)3月、萬屋錦之介の十三回忌に東京池袋の新文芸坐で2週間開催された。『笛吹童子』から『宮本武蔵』まで、選り抜きの東映作品32本を一挙上映した。そのうち10本がニュープリント、内6本は約50年ぶりにスクリーンに映写された作品だった。大衆に夢とロマンを与える娯楽作あり、戦乱の世に人間が生きていく意義を問う力作あり。チャンバラあり、ロマンスあり。映画館に集った皆さんは、錦之助の素晴らしさはもちろん、現代ではもはや作り得ない豪華絢爛時代劇の醍醐味も満喫していただけたと思う。
その後京都でも「錦之助映画祭り」を催した。4月に祇園会館で開幕し、6月に四条烏丸の京都シネマで一週間、錦之助映画の代表作を7本上映した。
昨年11月には錦之助生誕77年を祝し、3月と同じく池袋の新文芸坐で15日間、「錦之助映画祭り」を催し、一年のフィナーレを飾った。 上映作品は計28本、3月のプログラムとは異なる作品を集めての上映で、ニュープリント9本、内5本は錦之助映画ファンの会の寄贈プリントだった。
それから約一年、今年(2010年)11月、再び池袋の新文芸坐で「錦之助映画祭り」が開かれる。「あの雄姿、ふたたび(アンコール)!」と題し、昨年上映しなかった作品にリクエストの多かった作品を加え計21本上映することになった。ニュープリントは8本、内2本は錦之助ファンの会の寄贈プリントである。11日間にわたり、錦之助映画を存分にお楽しみいただきたい。
錦之助映画ファンの会
代表 藤井秀男 |