セザムだより 第二号
その後の『英単語呂源』~ (2003.12.12)
『たんごろげん』という本のタイトル、初めは馴染まなくても必ず世の中に広めてやろうと思い、考えに考えて付けた名前なんです。「単語」だけでは英語かどうか分からないと人から言われ、あとから「英」の字をかぶせたわけですが、どうも語呂が悪くなってしまいました。実際、本の名を言うと怪訝な顔をする人がほとんどで、「英単語に、語呂の呂、語源の源」と説明してもなかなか通じない。四字熟語ならず不可解な五字熟語みたいに思えるのでしょうか。
セザム進学会(私のやっている塾)の生徒なんですが、本の名前を間違えて頭にインプットしてしまった中1の男の子がいまして、神田の三省堂へ買いに行った。しかし、どこを探してもない。そこで、レジで若い女の店員さんに問い合わせたそうです。
「たん・げろ・ごん、という英語の本ありませんか?」
いやー、痰とゲロでは汚なすぎる!
それでも店員さんは親切にいろいろ調べてくれたらしい。
なーに見つかるはずがない。そこは中学の学参売り場だったんです。
ちなみに、社名の「エコール・セザム」も聞き返されることが多い。
「ワコール?」とか、「セゾン?」とか・・・。
下着のメーカーでも西武系列でもないって!
余談はさておき・・・。
前回は、難産のすえ、拙書がやっと世に出たあたりまで書きました。なぜか不思議なもので、あちこちの書店に置かれ始めると、最初の感動などあっという間に冷めてしまうものなんですね。三省堂の本店で平積みになっているのを見たときは、わが子が有名中学に初合格したみたいに嬉しかった。でも、一つ受かってしまうとあとは当たり前のように感動が薄れてくる。あっ、ここもまた合格しちゃった、って感じです。思えば贅沢な話ですが、新宿の紀伊国屋本店に十冊積まれているのを見ても、そんな気分でした。(実は前々からの夢だったのですが・・・。)同じ紀伊国屋の新宿南店では、はなっからレジ前の透明ケースに収められ、なぜかVIP待遇!(VIBの方が正確?)ひとつ置いて隣がビートたけしの本なんですから、たまげました。(しかし悲しいかな、わずか10日で栄光の座から滑り落ちました。)
東京では前記の二店のほかに、丸善、旭屋、八重洲ブックセンター、ジュンク堂など、そして全国の大都市の大きな書店に置いてもらい、アマゾンやヤマトといったネット書店でも扱われるようになってみると、もう今度は入学した後のわが子が心配になってくる。
大丈夫かな(売れるかな)、もしかして落ちこぼれはしまいか、競争に敗れて帰ってくるのではないか(返本されてしまうのではないか)・・・とか。
生来強気で自信家の私としたことが、手帳片手に書店まわり。市場調査を始めたのも不安に駆られてのことでした。まったく授業参観へ行く親の心境です。しかも、わが子が複製のクローンのようにあちこちにいるから、こっちの体がいくつあっても足りない。せいぜい東京の書店を一日3、4店回るのが限界です。
取次店の配本のリストを頼りにあちこち回るのですが、初めて行く書店がほとんどで、交番のおまわりさんに場所を尋ねることもたびたび。やっとたどり着いて、中をぐるっと一回り。可愛いわが子の顔はすぐに目に付くものです。
もう親バカこんこんちき。たるんだ帯を直したり、きちんと並べ替えたり、子供の身だしなみを整えてやるみたい・・・。今度はレジへ行って、担当の係りの方にご挨拶です。
「出版社のエコール・セザムの者ですが、(名刺を差し出して)お世話になっております。」
売り場担当の店員さんは、やさしそうな若い女性もいれば、こわそうな中年女もいる。明るくさばけた感じの男性もいれば、暗そうで無口なヤツもいて、彼らがみな、子供の担任の先生に思えてくる。
さて、そこで分かったことは二つ。
一、店によって本の扱いに雲泥の差があること。
現場の調査結果では、多分まともに見もしないで取次店へ即返本した店もあった。また、棚に1冊だけ置いて残りは引き出しか在庫置き場にしまっている店もあって、これも扱いが悪く、売れるのは容易でない。
二、『英単語呂源』は期待していたほど売れていない。
目立つ位置に平積み(または面出し、注:業界用語で、本の表紙が見えるよう正面を向けて棚に置くこと)になったとしても店の立地条件や客数・客層によって売れ行きが大幅に異なること。拙書を大変優遇していただいている書店でも平均3日に1冊売れればましなほうで、1週間に1冊も売れないこともざらだという
現実!
もちろん、覚悟はしていたものの、営業とハンソク(注:販促と書き、販売促進のことだそうです)に力を入れなければ、そう簡単に本は売れないことを痛感。
(テレビの番組かなんかで紹介されれば別なんですがね・・・いや、ひがんでもはじまらない。)
そこで、前々から計画していた作戦を実行しよう、と決心しました。さて、その作戦が効を奏したかどうかは次回のお楽しみに!
(多分ダメかも・・・だんだん自信がなくなってきた。)
2003.12.12 キス。